【貧血のメカニズム】運動のパフォーマンスに直結する“酸素不足”の正体 - physica
「軽い運動でいつもより息が上がる」「トレーニング中に頭がボーッとする」「急に立ちくらみがする」
そんなとき、もしかしたら“貧血”が関係しているかもしれません。
この記事では、貧血がどうやって起こるのか、体のメカニズムをわかりやすく解説します。
貧血とは「血液の酸素運搬能力が落ちた状態」
貧血とは、単に血が足りない状態のことではありません。
正確には、赤血球やヘモグロビン(Hb)が不足し、体に酸素を運ぶ能力が低下した状態のこと。

赤血球は肺で酸素をキャッチし、ヘモグロビンがその酸素を全身に運搬します。

ヘモグロビンの量が少なかったりうまく酸素をキャッチできなかったりすると、全身に連れていける酸素の量も減ります。
貧血になると筋肉や脳が“酸欠状態”に陥り、疲れやすさや目眩(めまい)が生じます。また、心臓への負担も増えます。酸素をなんとか送ろうとして心拍数が上がりやすくなり、動悸を感じることも。
どうしてヘモグロビンは減る?貧血の主なメカニズム

① 鉄不足(鉄欠乏性貧血)
最も多いタイプ。
ヘモグロビンの材料となる鉄が不足すると、赤血球は作れても“酸素を運べる能力が低いヘモグロビン”しか作れません。
原因としては、過度なダイエットによる鉄の摂取量の低下や激しい運動による鉄の消費などがあります。
また、これとは別に病原菌やウイルスに感染した際の吸収力の低下もあり得ます。これは、感染症の症状というよりも、病原菌やウイルスに余計な栄養を与えて活性化させないための生理機能です。逆に「貧血気味だったので鉄分を摂ったら風邪を引いた」という経験がある方も多いのではないでしょうか。
② 赤血球の生産が滞る(造血機能低下)
赤血球は骨髄で毎日約2000億個作られていますが、脾臓や肝臓では毎日同じ数だけ古い赤血球が破壊されています。
そのため、ビタミンB12や葉酸不足、骨髄の機能低下などによって赤血球の生産量が減ったり、未熟な赤血球しか作られなくなる(巨赤芽球性貧血)ことでも貧血は起きてしまいます。
③ 赤血球が壊されすぎる(溶血性貧血)
赤血球は通常120日ほど寿命がありますが、これが激しい運動(足裏の衝撃で赤血球が壊れるランナー貧血)や遺伝的な赤血球の脆弱性 、免疫の異常などの理由で“壊されやすくなる”ことがあります。
④ 出血による血液そのものの損失
急な怪我や、慢性的な消化管からの出血などで赤血球が失われるケースです。
月経量が多い人が慢性的な鉄欠乏になるのもこの仕組み。
運動と貧血

スポーツ貧血は意外と多く
- 汗による鉄喪失
- 筋肉増加で鉄需要が増える
- 足裏の衝撃で赤血球破壊
- 食事制限で鉄が不足
などが重なると、筋力や持久力、集中力も低下して運動のパフォーマンスが一気に落ちます。結果として怪我のリスクが高まるので、運動(特にマラソン・格闘技・サッカーなどの“赤血球が壊れやすいスポーツ”)をされる方は注意が必要です。
貧血の予防

● 食事で鉄を意識
ヘム鉄:赤身肉・レバー・魚
非ヘム鉄:ほうれん草・小松菜・豆類
※ビタミンCと一緒に取ると吸収率アップ。
● B12・葉酸もセットで(造血に必須)
B12:魚、肉、卵
葉酸:野菜、海藻
● 明らかに症状があるなら医療機関へ
自己判断の鉄サプリは過剰摂取や副作用を招くことも。まずは医療機関での血液検査が鉄則です。
運動している人ほど対策を
貧血は体の酸素配送システムが崩れた状態です。ヘモグロビンが不足すると、トレーニングの成果も出にくくなり、普段の生活にも影響します。
運動量が増えると鉄の需要も上がるため、普段から運動をしている人ほど“自分は大丈夫”と思わず、定期的なチェックと食事管理をしていきましょう!
この記事のライター
physica編集部
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