足が脳を刺激する?―バランス感覚と足裏の関係― - physica
私たちは普段、立つ・歩くといった動作を当たり前にこなしています。
しかしその背後では、足裏からの膨大な情報が脳に送られ、全身のバランスを制御していることをご存じでしょうか?
実は、「足の感覚」と「脳の働き」には密接な関係があるのです。
足の裏は“第二の脳”

足の裏には、外部からの機械的な刺激を感じる「感覚受容器」(メカノレセプター)が多数存在しています。
これらは地面の傾きや圧力の変化を感じ取り、脊髄や小脳、大脳へと情報を伝達。脳はそのデータをもとに「どの筋肉をどれくらい動かせばバランスを保てるか」を瞬時に判断して体勢を制御します。

つまり、足裏は全身のバランスセンサーの役割を果たしていて、このセンサーが鈍くなるとバランスを崩しやすくなったり、姿勢が悪くなったりします。
足への刺激が脳を活性化

近年の神経科学の研究では、足裏への刺激が脳を活性化することがわかってきています。
たとえば、2019年に筑波大学の研究グループが行った実験では、被験者の足裏に微弱な振動刺激を与えたところ、前頭前野(集中・判断・記憶に関わる領域)の血流が増加。同時にバランス保持能力の向上も確認されました。
また、別の研究では、裸足での軽い運動(ヨガ・バランスボードなど)を続けることで脳波のα波が増加し、集中力が高まったという報告もあります。
つまり、足の裏からの微細な情報を処理し、体幹や下肢の筋肉をコントロールする過程自体が脳を刺激するトレーニングになっているのです。
子どもが裸足で遊ぶことが脳の発達に良いと言われるのも、この神経系の活性化が理由のひとつです。

逆に、足の形に合わない靴やソールの固い靴、ハイヒールなどを日頃から履いていると、足裏の刺激が減って神経の感受性が鈍る可能性もある
今日からできる「足×脳」トレーニング
以下のような簡単な習慣で、足裏と脳を同時に鍛えることができます。

裸足でのバランストレーニング(片足立ち、ヨガの木のポーズなど)

足の指を動かすエクササイズ(タオルギャザー、足指じゃんけんなど)

凸凹での足裏刺激(マッサージボール、青竹踏みなど)

裸足でのウォーキング(安全な屋内・砂浜など)
こうした刺激を日常的に取り入れることで、バランス力だけでなく、集中力・認知機能の維持にも効果が期待できます。
脚の筋力は衰えていないのに…
- 電車の中で立っているのが苦手
- 立ったまま靴を履くとふらつく
- まっすぐ歩けない
という方は、ぜひ試してみてください。
参考文献
・Tsukuba Univ. Human High Performance Research Center (2019)
・Journal of Physical Therapy Science, 29(5): 812–817 (2017)
・Effects of plantar tactile stimulation on brain activation and postural control, Fujiwara K.ら(2015)
この記事のライター
physica編集部
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