身長が2倍だったらスポーツは有利?|スポーツと体格の関係 - physica

バスケットボールやバレーボール、走り高跳びなど、身長が高いほど有利なスポーツはたくさんあります。

では、もしも――身長が“2倍”になったらどうでしょう?

今回は、生体力学(バイオメカニクス)とスポーツ科学の視点から、もしも身長が2倍になったら、スポーツで無双できるのかを徹底解説します。

身長が高いほど有利とされるスポーツ

まず、一般的に「背が高いほど有利」とされる代表的スポーツを整理します。

  • バスケットボール
  • バレーボール
  • ハンドボール
  • ローイング(ボート競技)
  • 高跳び・棒高跳び

また、身長が高ければ必然的に体重も重くなるので、「体重が重いほど強い」傾向があるスポーツも挙げておきましょう。

  • 相撲 柔道(無差別級)
  • アメリカンフットボール(ライン)
  • ラグビー(フォワード)
  • 重量挙げ・パワーリフティング(重量級)

では、この体格の有利性は身長が2倍になることでさらに高まるのでしょうか?

結論:ほぼ全てのスポーツで不利になる

一見すると「リーチが伸びてパワーも増してスポーツに有利では?」と思えますが、実際には圧倒的に不利になります。

理由は、体の大きさは「筋力」「体重」「関節負荷」などでバランスが取れて成立しているためです。

身長が2倍になると、このバランスが完全に崩れます。

仮に体型をそのままに体全体が大きくなった場合、身長の倍率に対して、断面積の倍率は2乗になります。筋力は筋断面積に比例するので、身長が2倍になると、筋力は4倍です。

これだけなら相当なパワーアップですが、同時に体積は3乗になります。つまり、身長が2倍になると体重は8倍に増えます。(ちなみにこれは人間だけに限らず、地球上で生きる全ての動物に当てはまります)

これと同じ。

体重に対して筋力が弱すぎる。

例えば、自分の体重の2倍の160kgでスクワットできる「体重80kgのアスリート」がいたとして、身長が2倍になると筋力こそ640kgでスクワットできる強さになりますが、同時に体重が640kgになるので、実際はただ立っているだけで全力を使っているような状態になってしまうということです。

当然スポーツを行っても筋力の増加より体重の増加が遥かに大きいため

✔ 体重を支えられない

✔ 関節にかかる負荷が過大

✔ 走れない・跳べない

✔ 動作が遅くなる

といった現象が起こります。

これはスポーツ全般に深刻なデメリットをもたらします。

各スポーツでの有利・不利を考察

● バスケットボール・バレーボール

リーチが伸びるため一見有利。しかし致命的に動けない。ジャンプ・加速・ストップが困難になり、走るだけで関節への負担大。不利。

● ローイング(ボート)

2倍のリーチと4倍の筋力でオールを大きく引けるメリットはあるものの、体重8倍の選手が乗るとボートが沈み、加速力も低下。不利。

● 陸上競技

短距離:加速できない、長距離:循環器が追いつかない、跳躍:体重が重すぎて跳べない、投擲:リーチと筋力が活きて爆発的に記録が伸びる。

● 相撲・柔道

投げられることはないかもしれないが、自身の体重を支えられず、姿勢の維持も困難。不利。

● アメフト・ラグビー

ボールを持ったら止められにくくなるように思えて、実際はスピードが大幅に落ちるためタックルの格好の的。ほぼロングパス係。

● 重量挙げ・パワーリフティング

筋力は増えるが、やはり体重増加の方が大きい。相対的に持ち上げる能力が落ちる。唯一仰向けで行うベンチプレスのみ無双できる。

「身長が高い=有利」なのは現実的な範囲だけ

バスケやバレーのように、身長がプラスに働くスポーツは間違いなく存在します。

しかしこれは

身長170cm → 195cm、180cm → 210cm

のような現実的な体格差で考えた場合に限られます。

身長が“2倍”になると、筋力と体重のバランスが崩れ、動きのスピードが失われ、心臓の負担も増えます。結局は「ほとんどのスポーツで圧倒的不利」になります。

あくまで思考実験の域は超えませんが、これはちょっと残念な結果ですね。

この記事のライター

physica編集部

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