マッスルメモリーは裏切らない - physica

「昔はもっと筋肉があったのに…」

そんなかつての筋肉を取り戻したい人に朗報です。

実は一度鍛えた人の体は、再び筋トレを始めると驚くほど早く戻ります。「マッスルメモリー」によって。

マッスルメモリーの仕組み

マッスルメモリーとは、一度筋肥大した筋肉が、再トレーニング時に以前よりも早く回復・成長する現象のことです。

ちょっと専門的な単語も出てきますが、この仕組みを簡単に解説します。

筋肉は「核」を増やして記憶する

筋肉は筋線維と呼ばれる細長い細胞で構成され、その中には「筋核(きんかく)」という細胞の核が存在します。

筋核

そして、心臓やその他の内臓などの筋肉では細胞内の核は1つであるのに対し、例外的に骨格筋の細胞内には核が複数存在しています。

トレーニングで筋肉が肥大すると、この筋核の数が増加します。かつては「筋肉が萎縮すれば筋核も減る」と考えられていましたが、最近の研究でこれが覆されました。

筋核は減らないのです。

Bruusgaard & Gundersenによるマウス実験では、トレーニング後に筋肉が萎縮しても、増えた筋核が数ヶ月維持されていることが確認されました。

これは「一度筋核を得た筋線維は、その後も成長しやすい」ことを意味します。まるで筋肉が「かつての自分」を覚えているかのようです。

ブランクがあっても早く戻る

筋肉

再びトレーニングを始めると、すでに多くの筋核を持つ筋線維は、新しいタンパク質合成を素早く始められるため、筋肥大のスピードが格段に上がります。

言い換えれば、一度筋トレを本気でやった人の体は、完全にはリセットされないということ。

これは「努力のセーブデータ」が筋肉の奥に残っているようなものです。

マッスルメモリーは脳にもある

脳のメモリー

実は、筋肉だけでなく脳神経にも“運動記憶”が形成されます。

ギターやピアノのように、筋トレの動作も脳の運動野にパターンとして記録されるのです。

そのため、ブランク後でも「フォームを思い出す」「動作がスムーズになる」という現象が起こります。

筋肉の「核の記憶」と、脳の「動作の記憶」。

この2つが合わさって、マッスルメモリーという現象が生まれているのです。

経験者のアドバンテージ

筋トレ再開

筋トレで増えた筋核は萎縮しても消えず、トレーニングを再開することでかつてのような筋肥大を確実に引き起こしてくれます。

筋トレを経験したことのある人は、そうでない人と比べて大きなアドバンテージがあると言えるでしょう。

もしあなたが一度でも筋トレに打ち込んだことがあるなら、久しぶりに筋肉に刺激を与えてみてはいかがでしょうか。

過去のあなたの頑張りを覚えている筋肉が、きっと再び応えてくれるはずですよ!


参考文献

  • Bruusgaard, J. C., & Gundersen, K. (2008). In vivo time-lapse microscopy reveals no loss of myonuclei during muscle atrophy. Proceedings of the National Academy of Sciences, 105(18), 7871–7876.
  • Egner, I. M., Bruusgaard, J. C., & Gundersen, K. (2013). Satellite cell depletion prevents fiber hypertrophy in skeletal muscle. Development, 140(24), 4799–4806.
  • Gundersen, K. (2016). Muscle memory and a new cellular model for muscle atrophy and hypertrophy. The Journal of Experimental Biology, 219(2), 235–242.

この記事のライター

physica編集部

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