
映画で観たトレーニング考察!アレどんな効果?#6『スネーキーモンキー蛇拳』編 - physica
1978年公開、ジャッキー・チェン主演の映画『蛇拳(英題:Snake in the Eagle’s Shadow)』。
ユーモアと本格カンフーアクションが融合した作品で、主人公のガンフー(ジャッキー)が「蛇拳」を学んでいく過程には、実際の武術トレーニングを思わせるシーンがたくさん登場します。
今回はその印象的なトレーニングシーンを取り上げ、実際の身体への効果を解説します。
『蛇拳』のトレーニング
トレーニング① 人を乗せたヒップリフト

映画の描写:
師匠(ユエン・シャオティエン)を乗せて木製のバーの上でヒップリフトをするガンフー。少しでもペースが落ちるとキセルをお尻に押し付けられる。
現実的な効果:
ヒップ(大臀筋)はもちろん、それ以上に脊柱起立筋・ハムストリングに強力な負荷がかかります。それに推定55kgはあろうユエン・シャオティエンが乗っていますので、相当鍛えられそうですが、腰の弱い人なら一発で痛めてしまうでしょう。
トレーニング② アイソメトリック・プッシュアップ

映画の描写:
腕立て伏せの姿勢を維持するアイソメトリックトレーニングを行うガンフー。手は指を立てて掌を着いてはならない。しかも途中で潰れようものなら下にある火のついた線香でお腹が焼けるといったペナルティ付きです。
現実的な効果:
腕立て伏せの姿勢で使われる筋肉は、主に大胸筋や上腕三頭筋ですが、これは指を立てて行うため、前腕屈筋群が酷使されています。おそらく蛇拳に必要な握力を鍛えるのが目的なのでしょう。
また、この状態で起こる筋肉の収縮(アイソメトリック収縮)はそれほど強いものではないものの、筋肉には持久力が求められます。対して前腕屈筋群は遅筋繊維が多く持久的な負荷に反応しやすい筋肉なので、このトレーニングは握力を鍛えるという意味では理にかなっていると言えるでしょう。
トレーニング③ 師匠とパートナーストレッチ

映画の描写:
師匠の膝で無理矢理背骨をへし折られるかのようなストレッチ。
現実的な効果:
整体院やストレッチ専門店で体を伸ばしてもらうのは気持ちいいですが、これをやられたらさすがにキツそうです。
パートナーストレッチのコツは、①伸ばす側がゆっくり且つ適度な長さまで伸ばすことと、②伸ばされる側が脱力をすること。筋肉は、急激または過度に伸ばされると、反射的に収縮してしまう性質があります。
トレーニング④ 卵の掴み取り

映画の描写:
竹の柱に乗った卵を師匠の妨害をかわしながら素手で掴み取るガンフー。
現実的な効果:
これは動体視力、反応速度、コーディネーション能力、アジリティ(敏捷性)のトレーニングになります。
対象との距離を空間的に把握し、その動きに反応して、イメージした位置に、正確かつ素早く手を動かす、といったかなり高度な技術が求められます。特に格闘技には必須の能力です。
実は全体的に理にかなっている

蛇拳(蛇形拳)は、その名の通り「蛇」の動きやイメージを取り込んだ拳法です。
最近流行りのアニマルフローもそうであるように、人間が別の動物の動きを模倣するには、筋力・持久力・柔軟性・敏捷性などの基本的な身体能力が高くなくてはなりません。
映画のコミカルな雰囲気に隠れていますが、劇中にはその辺りのトレーニングもしっかり組み込まれていて、それが主人公の強さを裏付ける役割を果たしているのでしょう。
この記事のライター

physica編集部
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