握力は寿命のバロメーター!?意外な健康指標の科学 - physica

握力といえば、子どものころ体力測定で測ったことがある方も多いでしょう。

一見すると単なる「手の力」ですが、近年の研究では握力が健康寿命や全死亡リスクと強く関係していることが分かってきています。

実は大規模な研究の対象

握力計と老女

近年の研究では、2015年の17か国・14万人以上を対象とした国際共同研究(※1)で、握力が弱い人ほど心血管疾患や死亡リスクが高いことが判明しました。 握力が5kg低下すると、全死亡リスクが16%、心疾患リスクが17%上がるという結果も。

※1.Prognostic value of grip strength: findings from the Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE) study Darryl P Leong et al. Lancet. 2015.

また、2018年に英国ので行われたUK Biobankデータ50万人以上を解析した研究(※2)では、握力が強いほど心血管疾患・呼吸器疾患・がんによる死亡率が低いことが報告されました。

※2.Associations of grip strength with cardiovascular, respiratory, and cancer outcomes and all cause mortality: prospective cohort study of half a million UK Biobank participants BMJ 2018;361:k1651

これらからも、握力の低下は単に筋力の衰えを示すだけでなく、全身の健康状態を映す指標であることがわかります。

握力自体は限定的な筋力

握力自体は、前腕屈筋群という腕のごく限られた筋肉の力によるものです。

前腕屈筋群

しかし、普段からトレーニングをしている人はわかると思いますが、前腕屈筋群はジムに専用のマシンなどもなく、狙って鍛えるのは難しい反面、鍛えようと思わなくても全身のトレーニングを続けているといつのまにか鍛えられています。

グリップを握る男性

これはダンベルやマシンなどを動かす際に握力が補助的に使われているためです。

ではなぜ握力が寿命と関係するのか?

日常生活でも、握力は単体で使われるということがほとんどなく、カバンや荷物を持ち上げる、何かに掴まる、引っ張るなど、様々な活動で補助的に使われています。

荷物を持つ女性

このように、握力は全身の筋肉量や活動量と意外にもリンクしていて、これらが少なくなると代謝や心肺機能も低下しやすい傾向があります。

つまり、握力と寿命は「握力を鍛えれば寿命が延びる」という因果関係ではなく「寿命が長い人は(握力が衰えないほど)活動量が多い」という相関関係として成り立っていると考えられるのです。

まとめ

握力は単なる「手の力」ではなく、全身の健康度と寿命を映す鏡。 握力が強いほど心血管疾患や死亡リスクが低いことが大規模研究で確認されており、日常的に握力および全身を使う運動を取り入れることで、健康寿命の延伸にもつながります。

次に体力をチェックするときは、ぜひ握力にも注目してみてください。

この記事のライター

physica編集部

physica編集部

楽しくて役に立つフィットネス情報をお届けしています。

TOP