
映画で観たトレーニング考察!アレどんな効果?#3『タクシードライバー』編 - physica
1976年公開の映画『タクシードライバー』。マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演のこの名作では、主人公トラヴィスが孤独と闘いながら狂気に堕ちていく姿が描かれます。物語後半、彼が自宅で黙々とトレーニングを行うシーンは、観客に強い印象を残しました。今回は、このトレーニングが実際にはどのような効果を持つのかを解説します。
『タクシードライバー』のトレーニング
映画では、トラヴィスが鏡の前で拳銃を使った早撃ちの練習や、腕立て伏せ、懸垂などを行う場面があります。体を鍛え、戦闘(やろうとしてることはテロですが)に備えることで「自分を武器化」していく彼の変化が描かれており、フィジカル面の強化が精神的変化とリンクしているのが特徴です。
トレーニング① 腕立て伏せ(プライオ・プッシュアップ)

映画の描写:
自宅の床で腕立て伏せ。しかも瞬発的に床を押して体を跳ね上げ、空中で両手を叩きます。トラヴィスはこれを50回行っているようです。
現実的な効果:
このようなトレーニングを「プライオメトリックトレーニング」といいます。
これは、筋肉がすばやく伸ばされた直後にその反動ですばやく縮む「伸張反射」を利用したトレーニング方法で、瞬発力やスピード、パワーを養う効果があります。この場合、腕立て伏せで行われているので、主に大胸筋、上腕三頭筋、三角筋などの"押す力"のそれが鍛えられるでしょう。
この連続した動作の中でも正しいフォームを維持しないと肩や手首を痛めてしまうため、やや難易度の高いトレーニングでもあります。
トレーニング② バーベルカール

映画の描写:
バーベルのようなものを持って黙々とカールを繰り返すトラヴィス。
現実的な効果:
腕立て伏せと打って変わって、反動を使わず丁寧にコントロールされたこの動きは、上腕二頭筋にダイレクトな刺激が入る「ストリクトな」カールです。
ただカールする際、左右の高さに差があるのが気になるところ。バーベルカールは鏡を見ながら行うのがおすすめです。
トレーニング③ 懸垂(ナローグリップ・チンアップ)

映画の描写:
部屋の入り口に通したパイプを使っての懸垂。握り幅は肩幅程度のナローグリップです。これまた50回は行っているようです。
現実的な効果:
懸垂は、主に広背筋と上腕二頭筋を使いますが、握り幅によってその使われる割合が変わってきます。
このように握り幅を狭くすることで上腕二頭筋や上腕筋に、これより広め(肩幅の1.5倍程度)にすることで広背筋に効かせることができます。
先ほどのバーベルカールといい、トラヴィスはかなり上腕二頭筋を鍛えているようですね。
トレーニングがもたらす心理的効果
トラヴィスは不眠症や孤独感を抱え、社会から孤立しています。
トレーニングは彼にとって、自分を強くする手段であると同時に、無力感を払拭する精神安定剤であり、(腐った社会への制裁を行動に移すための)儀式であったように見て取れます。
劇中でのトラヴィスの行動原理はさておき、現実のフィットネスでも、体を鍛えることは自己肯定感を高め、ストレス発散やメンタルケアに役立ちます。
「You talkin’ to me?」──モチベーションを維持する秘訣は、鍛えた自分の体を鏡に映すことかもしれません。
この記事のライター

physica編集部
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