ちゃんと化学名があるのに、ビタミンはなぜ「ビタミン」? - physica
レモンやキウイ、ブロッコリーなどに豊富に含まれ、その抗酸化作用で私たちの美容や健康をサポートしてくれる有機化合物「アスコルビン酸」。
この名前は聞き慣れない方も多いかもしれませんが、別名は「ビタミンC」と言います。
なぜアスコルビン酸は、そのままの名前ではなく「ビタミンC」と呼ばれるのか。
今回は、そんな不思議を紐解いてみたいと思います。

ビタミンには、それぞれ化学名がある
まず、ビタミンという名前と化学名の違いを整理してみましょう。
代表的なものを挙げると
- ビタミンC → アスコルビン酸
- ビタミンB1 → チアミン
- ビタミンB2 → リボフラビン
- ビタミンB3 → ナイアシン
- ビタミンB6 → ピリドキシンなど
- ビタミンB12 → コバラミン類
- ビタミンA → レチノールなど
- ビタミンD → カルシフェロール類
- ビタミンE → トコフェロール類
- ビタミンK → フィロキノンなど
となります。
このように、ビタミンと呼ばれている物質は、実はそれぞれ別の化学物質です。特に「ビタミン」という一つの物質があるわけではありません。
なぜこれらをまとめて「ビタミン」と呼ぶのか
ビタミンとは、いわば「人体には必要だが、体内で十分な量を合成できないため、通常は食事などから摂取する必要がある有機化合物」を指す栄養学上のカテゴリーです。
例えばビタミンCとビタミンDは、化学的にはかなり違う物質ですが、“人間の健康を維持するために必要な有機化合物”という栄養学的な共通点によって、同じ「ビタミン」というグループに入っています。
名前の由来
実は「ビタミン」という名前自体にも面白い歴史があります。
20世紀初頭、食品の中には、非常に少量でも生命維持に不可欠な物質が存在することが研究によって明らかになっていきました。
当時、こうした物質は「生命に必要なアミン類(含窒素化合物)」ではないかと考えられていました。
そこで「vital(生命に関する)+ amine(アミン)」という意味で
vitamine【ヴァイタミン】
という言葉が作られました。
ところが、その後の研究によって、これらの物質がすべてアミンではないことが分かります。
そこで語尾の「e」だけ取って発音はそのまま
vitamine → vitamin【ヴァイタミン】
となりました。
日本語の【ビタミン】は、この「vitamin」を音写したものです。
なぜ「ビタミンA」「B」「C」なのか
ビタミンの種類を表すA、B、Cといったアルファベットにも歴史があります。
研究が進むにつれて、食品中にはさまざまな必須栄養素が存在することが分かってきました。
そこで、新しく発見されたものに順番にアルファベットが付けられていきました。
その結果、ビタミンA、B、C、D、E、Kという名前が登場します。
ちなみに、ところどころアルファベットが抜けているのは、かつてビタミン候補として考えられていた物質が、後にビタミンではないと判断されたり別のビタミンと混同していたものなどがあるためです。
ビタミンは「人間にとって」の分類でもある
さらに興味深いのが、このビタミンという分類は生物によっても変わり得ることです。
例えば、人間はビタミンCを体内で十分に合成できないため、食事から摂取する必要があります。
一方、ビタミンCを体内で合成できる動物もいます。(というより人間が少数派。大概の動物は合成できる)
つまり、ある物質が「ビタミン」と呼ばれるかどうかは、単純にその物質の化学構造だけで決まるものではありません。
その生物が、その物質を自分で十分に作れるかどうかにも関係しています。
「ビタミン」は、化学の分類というより、生物と栄養との関係から生まれた言葉なのです。
なぜ化学名があるのに、わざわざ「ビタミン」で呼ぶのか
そして本題です。なぜアスコルビン酸は「ビタミンC」と呼ばれるのか。
理由はシンプルです。
使う場面が違うからです。
化学的な性質や分子構造について詳しく扱うのであれば、「アスコルビン酸」という化学名のほうが適しています。
一方、「どんな栄養素なのか」「何から摂れるのか」「不足するとどうなるのか」といった栄養の話をするときには、ビタミンの一種として「ビタミンC」と言ったほうが分かりやすい。
要は使い分けです。
私たちが飲む水も、分子構造について考えるときは「一酸化二水素(H2O)」の方が都合が良いものの、日常生活では「お水」と呼んだ方が分かりやすいのと一緒ですね。
この記事のライター
physica編集部
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